〜 第17弾 〜  庭の時間
 
著者:辰巳芳子
文化出版局

当サイトをご愛読の皆様、他コーナーで紹介致しましたマテバシイのポタージュはいかがでしたでしょうか?

昨今、ミシュランの新刊も発売となり、マスコミに華々しく登場する銘店や料理人の作る華麗な料理の数々を見ていて、ふと気になる事がありました。
自分が本当にこの料理を食べたいか?と。
確かに、上等のフォアグラやトリュフには魅力を感じます。手練の技で作られた日本料理も焼き鳥もいつか一度は食べてみたいと思うのですが....。

食べる事が好きで、料理も、外食も好きなのですが、その反面、自分が本当に食べたいと求める基準みたいなものが有名店の高価な外食よりも、最近はふとした事で出会う以外な美味しさの方に偏ってきている様に思えるのです。

例えば、暑い夏の日に冷たい井戸水で冷やした素麺やスイカ。
畑でもいでそのまま食べる、太陽の温度のトマト、 キュウリ 、ブルーベリー..e.t.c..
沢山釣れたからと頂いた釣ったばかりの魚。
形は悪いが自分で育てた野菜や果物。
それらを食べた時の喜びを思うと、単純に比較にはならないけれど、星や値段や産地などの褒め言葉もなんだか色あせて感じてしまうのかも知れません。
貧乏人の負け惜しみと思われるかもしれませんが、お金では買えないものの中に、本当の美味や洗練が潜んでいるのだと改めて教えてくれたのが料理研究家、随筆家の辰巳芳子さんの本「庭の時間」でした。

家庭料理研究者としては、重鎮中の重鎮として著名な方で、鎌倉の自邸で行われる料理教室で行われるスープの作り方を通じて料理の心を教えられている方です。

本書は、鎌倉の自邸の庭に育つ植物にまつわる随筆と簡単なレシピによって構成されています。自生する菜花を使った料理の選択も、また十二月に分けられた随筆にも、普段から言われている辰巳さんの料理の神髄が凝縮されており、辰巳さんのご家族のエピソードや草木への愛情など、その文章の美しさに相まって人生にとって大切なものとは何かを教えてくれている様に感じました。

巻末にある、ご自邸の庭の草木の一覧や、それぞれの料理、薬効などの一覧も載せられており、辰巳芳子さんの世界が凝縮された一冊であると思います。
この本を是非とも虎犬ライブラリーの蔵書に加えたいと思い、紹介させて頂きました。

by Ryutaro

 

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